結論:一方的な「滞納・解除」通知にも、借主には打てる手がある
家賃を毎月ちゃんと払っているのに、突然「滞納です。契約を解除します」と書かれた手紙が届いたら、多くの人はパニックになると思います。
でも、そこから先は「泣き寝入り」だけが選択肢ではありません。専門の団体や弁護士と一緒に、内容証明で冷静に反論していく道もあります。
前回の全借連編①では、私が全国借地借家人組合連合会(全借連)に相談し、「一人で抱え込まない」という選択肢にたどり着くまでの流れを書きました。
今回はその続きとして、「全借連に相談した翌日」に起きた出来事と、そこから弁護士名義の内容証明を打ち返すまでのプロセスを、実体験として記録しておきます。
全借連と弁護士に相談した、まさにその翌日
全借連の紹介で、私は賃貸トラブルに詳しい弁護士に相談することになりました。
そこで、これまでの家賃値上げ要求や更新料、遅延損害金の話を一気に整理しながら、
- どの請求が法的に争いがあるのか
- どこまでが裁判上の和解で清算済みなのか
- これから何を準備しておくべきか
といった点を、落ち着いて確認することができました。
正直、その日は「ようやく専門家に話せた」というだけで、かなりホッとしていました。
ところが──相談の翌日です。ポストを開けると、見慣れない赤いスタンプの押された封筒が届いていました。
中身は、家主名義の内容証明郵便。タイトルは「催告書」
内容証明郵便とは、「いつ・誰が・どんな内容の文書を出したか」を郵便局が証明してくれる郵便のことで、法律トラブルの場面でよく使われます。
要約すると、だいたいこんな内容でした(個人や物件が特定されないよう、少し変えています)
家主から届いた「催告書」の中身
- 「本通知受領後〇日以内に、滞納賃料として合計〇〇万円を支払え」
- 「期限内に支払わない場合、本通知をもって賃貸借契約は解除されたものとみなす」
- 「解除後も占有を続ける場合は、損害賠償請求やしかるべき法的措置を検討する」
さらに、その「滞納賃料」の内訳としては、
- 直近の更新料(和解で一括清算したはずの分)
- 家賃増額分をさかのぼって計算した差額
- それに対する年〇%の遅延損害金
- そして、それらを補うために「毎月の家賃から勝手に充当した残り」が「滞納」とされている
といった構成でした。
私は毎月、「〇月分家賃」と明記して期日どおりに家賃を振り込んでいました。
それなのに、「家賃は滞納」「信頼関係は破壊された」と一方的に書かれていたのです。
封筒を開けた瞬間、手が少し震えました。
「昨日、弁護士に相談したばかりなのに……」
タイミング的には、完全にすれ違いのクロスカウンターでした。
「本当に自分が送らないといけないのか?」という不安
内容証明を読み終えたあと、まず頭に浮かんだのは、こんな不安でした。
- 「これ、私一人で返事を書かなきゃいけないの?」
- 「もし変なことを書いてしまったら、逆に不利にならない?」
- 「そもそも、期限内に返事を出さないと、すぐ追い出されてしまうのでは…?」
一人暮らしで、しかも争い事が苦手な方なら、同じように感じると思います。
私もまさにそのタイプだったので、「自分の言葉で何か書いて、相手を余計に怒らせたらどうしよう」と、かなり怖かったです。
そこで私は、全借連の担当者と弁護士に、すぐに現状を共有しました。
メールで経緯をまとめ、届いた内容証明の要旨を書き起こし、「どのように反論したいか」を自分なりに文章にしました。
この「自分なりの反論の芯」をまとめる作業が、後から振り返るととても大事でした。
- 本件は法定更新であり、新たな更新料義務はそもそも発生していないこと
- 過去分の更新料や遅延損害金は、和解で一括清算し、清算条項でゼロになっていること
- 自分は家賃を毎月支払い続けているのに、勝手に他の債務に充当され、「滞納」にされていること
これらを、感情ではなく「事実」として書き出していきました。
弁護士と一緒に「反論文」を磨いていく感覚
私がまとめたドラフトに対して、弁護士からはこんなコメントが返ってきました(要旨です)
- 和解調書の日付や条項を、きちんと書き込んだ方がよい
- 「債務不履行はない」と、法律上の主張ははっきり言い切る
- 家賃の支払いについても、民法の条文を根拠に「家賃に充当する」と指定してきたことを明記する
つまり、「言いたいことの方向性は合っているので、法的な骨組みをもう少し太くしましょう」というアドバイスでした。
正直、「法律の条文まで自分で書け」と言われたら、そこで心が折れていたと思います。
でも今回は、私が「こう言いたい」という中身を出し、それを弁護士が法律の言葉に翻訳してくれる、という役割分担でした。
その結果できあがった反論文は、
- 第一に:法定更新で更新料義務が前提からないこと
- 第二に:和解調書の清算条項により、和解日以前の債務は清算済みであること
- 第三に:毎月の家賃支払いと、一方的な充当の問題点
という、三本柱の構成になりました。
法律用語だけを見ると難しく感じますが、やっていることはシンプルで、
「私は家賃を払っている」
「過去分は裁判で清算済み」
「勝手に組み替えて『滞納』と言われるのはおかしい」
という、ごく当たり前のことを、きちんと紙に落とし込んだだけです。
そして、弁護士名義での内容証明発送へ
ドラフトがまとまりつつある中で、もう一つの大きな決断がありました。
それは、「この反論を、誰の名前で家主に送るのか」という点です。
自分名義で送れば、体験談としては面白いし、郵便局での手続きだけで済みます。
ただ、家主側からすると「まだ個人相手」と見なされる可能性もあります。
一方で、弁護士名義で送れば、
- 内容証明一通のインパクトが大きくなる
- 「これ以上は法的な場で争う覚悟があります」というメッセージにもなる
全借連の担当者とも相談した結果、最終的には弁護士名義で家主宛に内容証明を発送する方針になりました。
費用は決して安くありませんでしたが、「ここが踏ん張りどころ」と考えました。
何より、
「この件については、もう弁護士に任せました。私は本業に集中します。」
と言える状態を作ること自体が、私にとって大きな心の支えになりました。
「家賃を払っている借主」が、できること
今回の一連の流れを通じて、強く感じたことがあります。
それは、「家賃をきちんと払っている借主には、思っている以上に取れる手段がある」ということです。
- 一方的な内容証明が届いても、その場で諦める必要はない
- 自分なりに事実と違和感を書き出し、全借連や弁護士に相談すれば、反論の形を一緒に作っていける
- 場合によっては、弁護士名義の内容証明で、家主側の無茶な主張にしっかりブレーキをかけることもできる
もちろん、これはまだ「途中経過」にすぎません。
この内容証明に家主がどう反応してくるのか、今後どんな手を打ってくるのかは、現時点では分かりません。
それでも一つだけ言えるのは、
「家主からの一方的な通告に、何も言い返せないまま飲み込まれる」
という状態からは、確実に一歩抜け出せたということです。
全借連と弁護士を「組み合わせる」という選択肢
無料相談やネットの情報だけでは限界があります。
今回、私が全借連と弁護士の両方に頼ったことで、
- 全借連:借主の立場からの経験値・相談の蓄積
- 弁護士:裁判や和解も含めた法的な戦い方
という、二つの専門性が、私の背中を押してくれる形になりました。
賃料増額ドットコムでは、今後もこの「全借連編」の続きとして、
- 家主からの内容証明にどう向き合ったか
- 弁護士名義の内容証明を送った後、何が起きたのか
- その過程で感じた不安や、実務的なポイント
を、できる範囲で記録していくつもりです。
もし今、あなたのポストにも「突然の家賃値上げ」や「滞納・解除」の通知が入っていたら──
一人で抱え込まず、情報+全借連などの相談先+必要に応じた弁護士という「三本柱」を使うイメージで、ゆっくりでいいので動き始めてみてください。
このシリーズが、同じように不安を抱えている誰かにとって、
「自分も一歩踏み出してみようかな」と思える小さなきっかけになればうれしいです。





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